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2008年12月29日
なんだかよくわからないままに28年が過ぎてしまった
辻 政博(文京区立誠之小学校)
1「曳舟小学校時代」
墨田区の曳舟小学校に新任で着任した。下町のごちゃごちゃした地域で、子どもたちはたいへん元気で素朴だった。新卒のなんもわからんぼくは、6年間そこで過ごした。「教育」も「子ども」もよくわからなかった。が、図工部の先輩方がよかったな。見よう見まねで授業をおこなった。
写真1は、5年生のちっちゃな女の子の絵。和紙に絵の具を塗って、水で洗って、割りばしペンで、墨で描いたもの。ほんとは「サーカス」がテーマだったけど、この子の作品はぜんぜん関係ないものを描いてる。というより、この子は全然活力がなく、静かににこにこ笑っている子だった。濡れた紙に割りばしペンの先っぽが触れるたびに、すうっと墨が染みていく。左の木の当たりは点々がいっぱいある。紙に吸い込まれていく感じに促されて、イメージが誘発されたにみたいだ。右側にはネコちゃんも登場している。なんともたどたどしい線描で、なんともさびしい感じがするのだが、小さなひ弱な手がたどった軌跡が、そこにその子の世界をつくりだしていると感じた。この子の絵は、ぐさりとぼくの胸に突き刺さった。
写真1

2、「北ノ台小学校時代」
写真2

型紙つくって、ローラーでころころして「ひみつのめいろ」(写真2)ってことで、やりはじめたんだけど、1年生のS君は宇宙人だから、覚えたての「ひらがな」を使いたくて、使いたくてしかたなかったんだな。「あのね、ずこうだからね、絵をかくといいんだけどね・・・」と言いたかったけど、言えなかったな。あんまり楽しそうだったから・・・。子どもには「絵」も「字」も関係ないんだってことをS君に教えてもらった。
「図工で遊んでばかりいてどうなるの」という声が、真面目な先生たちから聞こえてきたが、ほんと、どうなるんだろと思っていたら、6年生のYさんは、上野動物園の全校写生会で、写真3の動物の絵を描いた。
写真3

「こりゃ、すごい」。たんなる描写ではなくて、精神性まで感じさせる作品となっている、とぼくは感じた。高学年になると普通、やる気なくなっちゃうんだけど、「よく遊んでたからこんなのができたんだ」とぼくはその時直感した。北ノ台では、1年から6年まで図工をもっていた。
3、「上板橋第二小学校時代」
写真4

写真4は、「鳥の巣たまご」という題材。3年生。
「木の上に鳥の巣がありました。たまごもたくさんありました。そこに、ねこちゃんが・・・」という話の続きを描いたんだけど、ぼくは、いたずらっこが多かったので、たまごやヒナが食べられちゃったらどうしようかと思ったんだけど・・・そんな残酷な思い過ごしは、ぼくだけで、全員、実にかわいらしい作品となった。ほんと3年生は、かわいいなあ。子どもは「やさしい生きもの」だと実感した。だから、大人は、子どものやさしさにつけこんではいけない。3年生は、精神的な分岐点。3年生までの経験がその後に反映する。世のかあさん、父ちゃん、先生は、一生懸命かわいがりましょう。
それから、上二時代は、都図研の理事長を2年間やった。このぼくがです。まだ、悠長な時代であったと言えましょう。でも、「予想」が足りなかったと今は思います。社会性が足りなかったのですね。いまでもそうですが、図工の先生は、アナーキーな側面を深く抱え込んでいます。それが、いいところでもあり、且つ、弱いところでもあります。
4、「千寿小学校時代」
写真5

写真5は、墨で描いたふくろう。段ボールの中に、はく製を入れて起きて、小さな窓を空け、ふくろうが入っているとは知らせずに、のぞきこませる。子どもは「ぎゃ~」。それから、みたり、みなかったりしながら、自分のイメージで描いていく。
こころのなかに、少しでも食い込むと、こんないい感じの表現になる。Nちゃんは、普段の教室の様子とはまったく異なる堂々としたふくろうを描きあげた。その気になるとすごいものだ。
・・・と、このように作品についてひとつひとつ想起していると、だらだらと永遠に文章を書き連ねることになってしまう。
最近は、ぼくでも、時々、エラソーなことを言うこともあるけど、ホントは、子どもの前に立つとそんなことは、ぶっ飛んでしまう。どんなことが、次の瞬間に起きるのかは、永遠に謎なのだ。子どもの前に立つとは、そんな瞬間の連続なのである。また、その場では、無限の出来事が起きていて、そのなかのほんの一部分が、みえてくるだけなのだ。
「図工だいすき子ども美術展~冬展~」という企画に参加して、今までを振り返る機会をもったのであるが、みえてきたのは、「なんだかよくわからないままに28年が過ぎてしまった」ということだった。
投稿者 zukodaisuki : 2008年12月29日 14:12